蛇籠

幸せそうに眠る蜷局は起きて
面倒臭そうに口から汚れた紙を吐き出した
それから眼を開いて
からころと筆と墨を一つずつ

可能な範囲で塗り変えるだけだよ
此の筆や此の墨程度じゃ
記憶を消すことはできないからね
だから、あくまでも可能な範囲
あとは記録して、繋ぐための準備も一応ね

かつて見たような
怒りに操られるような不安も見えず
不要な部分だけを何度も
着実に塗りつぶしていく

ふと顔を上げて言う

せっかくだから
その面倒事も
こっちで記録しようか

返答の選択肢のない質問

厄介だよって説明するのに被せるように

僕を舐めているのか?

したり顔

くすんだ桃色の塊を書き下していく

やっぱり、随分汚いね
でも、愉しめそうだし
役立ちそうだ

単純な雑魚すぎるから
逆に厄介なのだろう
必要以上の思考は不要
扱う言葉に振り回されているような輩に
必要以上の言葉は不要

端的に確実に
云いたいことだけを選んで
単純な言葉にしてしまえばいい

とりあえず
此は預かっておくよ

それにしても
猿と言い豚と言い
獣は言葉が通じないから
確かに嫌になるね

愉しそうに苦笑いを浮かべて
紙切れを再び飲み込んだ

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