小さい頃の記憶がない
具体的には5才までの記憶が抜け落ちている
唯一残っているのは
当時住んでいたマンションの部屋の見取り図
実家から自転車で15分ほど走ったところにある
3階建ての9部屋マンションの真ん中の部屋
そこで
誰もいない
家具だけが置かれた光景を
真上から眺めている様子だけが残っている
どこで寝ていたか
父親の部屋の場所はどこか
家電の配置はこう
そんな事実だけが頭の中に見取り図として残っている
記憶が戻ったのは
実家に戻ってから
同時に片親になって
血の繋がった片割れは僕の最も憎むべき対象になった
今でも殺せる程
それから後は多分
家に帰る ということに
潜在的に恐怖心を覚えていた
いや、家に帰ると言うよりは
帰ると誰かが居る家
それが怖くて堪らなかった
鍵っ子だったのを周りに慰められたが
別段何も感じず
むしろ気楽で嬉しいほどだった
家の中に幽霊が居て僕を食い殺してはくれまいかと
期待をしていたこともあった
その時は周りの人間に親が二人いることを
全く気にしなかったし
変だとも思わなかった
祖母と暮らすようになってから
またかつての恐怖心が再発して
学校と部屋を往復するだけの日々
耐えられなくなって
一年前に家を出て
今は静かに暮らしている
多分小さい頃に
何かを記憶から消したんだと
そう思う
それは暴力を振るう当時の父の姿かもしれないし
喧嘩をして血塗れになった部屋なのかもしれないし
けど
多分僕は
そこで本来貰えるべきものを
貰わなかった気がする
この捻くられた性格を作り出した理由は
本質的に何かが足りていない
それは自分の経験を踏まえるに
何かはもう判っているのだけれど
この割り切りの良さが通用しない
唯一のもの
いくら口先で否定しても
潜在的に、本質的に、本能的に欲しているもの
あぁ、恥ずかしいけどそうなんだ
それを曝け出せるのは
本当に限られた人だけ
小さい頃の失敗
こればかりは僕の所為じゃないの
それさえ取り戻すことができれば
燃やした沢山の物
少しは報われるのだろうか
本当、不器用で笑えてくるけど
今度は手に入るといいな