僕の弱さを知ってたんだ
「ちょっくら死んでくるわ」
そう言って彼は姿を消した
まるで
また戻ってくるかのような言い草で
飯でも食いに行くかのように
彼はそう言い残して
姿を消した
「あぁ、じゃあな」
僕もそう言って
傷だらけの左手を振って
そいつを見送った
何処に行くか
どうやって死ぬか
それさえ知らなかったけど
何故か聞く気が起きなかった
数日後
奴が死んだのを聞いた
電車に飛び込んだらしい
奇跡的に顔だけは残っていたらしい
葬式の日
顔だけが入れられた棺の前で
奴の顔を前にして
僕は笑って
「おかえり」
そう言った
顔が少し動いた
そして奴は
炎の中に消えた
「ちょっくら死んでくるわ」
またそう言った
そんな気がした
どうせなら
俺の傷だらけの左手も
持って行ってほしかった
それだけが惜しかった
また左手を振って
奴を見送った
もう会えない
それはわかっていた