光と砂鉄による昨日の描写

演目:蠍座サーカス団

がんじがらめに縛り付けていた
理性の鎖を外すときが来た
そこには本能という獣を飼っていて
欲という餌を定期的に檻の隙間から与えて
暴れ出さないようにしていた

餌を与えるのは感覚という飼育員
彼は最初のうちは非常に怯えたまま
遠くから餌を投げ入れていたのだが
最近はどうもあの獣と何かあったのか
お互いを通わせているようだ

彼と向き合う時の
獣の瞳はとても澄んでいて
見つめ合い餌を与え続けるうちに
彼は獣の眼を通して自分を見る方法を知る

その姿は日に日に獣に近づいていた
眼、鼻、口、耳、骨
彼はそのことを悩んだが
不思議と苦しい気持ちはなかった
姿は似ても自我を失うことがなかったということと
自分の姿を見ることができたという嬉しさ

こうした彼の獣に対する感情は
嫌悪から受容へ
そして
受容から支配欲へと

そして彼は決意する
獣を閉じる鎖を外そうと
その場を壊すためではなく
自らの中にそれを取り入れる為に

互いを隔絶させていた理性の鎖が
錆びて軋んで赤銅色になった
それは獣の流す血の所為か
彼が吐き出す息の所為か

感覚が
本能を喰い殺して
自らに昇華させるとき

ぬかるみに足を入れる
戻れない

やがてそこに降ってきたものは
空を覆い尽くすほどの
銀色の眩しい平面だった

舞台:鏡のない世界

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