20 余計な言葉

「それ以上何か言うと、殺すよ」
二段ベットの上から、彼は静かに呟いた

明かりの点かない部屋の中で
彼は共同生活をしている

ベットの上には彼が居て
ベットの下には何かが居る

それぞれはその場所から動けず
互いの姿を見ることは出来ない

故に言葉を声にして
やり取りを行う日々

下のベッドからの声は
性別も判断できない程の
無機質さを放っていて
それでいて彼の質問にも
曖昧な返事しか返さなかった

偶発的に起こる、下からの発言
この閉鎖空間の中に於いて
唯一無二の外部要因としての音

その無機質さに彼が苛立つ事は
無論少なくなかった

時折叫んではベッドを叩き
柵を蹴り
その音の介入を妨げようとする

それでも耳を塞いでも
聞こえてくるのは
幾度も繰り返した機械のような音の残響

彼は、声に殺されようとしている
正体不明の無機質な声
ただそれの繰り返しという
他愛もない拷問のように

今日もまた、彼が居る限り
続く

『42℃のお題』より
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