此処に来れて好かった
白い肌をした少年は
何時振りかの笑顔を浮かべて
生えているタンポポを一つ摘んだ
でしょ、信じられないよね
1月にタンポポ畑が満開になるなんて
同じように白い肌の少女
彼と同じようにタンポポを一つ摘み取る
どちらも頬は痩け落ち
ふらふらになりながら
此の場所に辿り着いた
小さな丘の木の下にある穴
小さな子しか通れない幅でも
今の彼らには大きすぎる穴だった
それを潜り抜けた先にある場所
明日から2月で
2人は明日死ぬ
彼は病気で
彼女は虐待で
根拠なんてなくて
ただ、二人ともそんな気がしているだけ
最後に見ておきたいね
そう話し合った場所が
この季節外れのタンポポ畑だった
ほんとに、最後なんだねぇ
笑顔を崩さないで少女は言う
明日には全部散っちゃうからね
今日だけだよ、ほんとに
同じように少年は笑う
『ねぇ、帰るのやめない?』
同時につく言葉
一瞬驚いた二人
愉しそうに笑って
ひとしきり笑って
眼を伏せながら少女は言う
だめだよ、私が残っちゃうから
うん、そうだよねぇ
少し、ほんの少しだけ悲しそうな顔で
少年は笑う
はい、これ
少年が何時の間にか持ったのは
小さな花冠
多分 ね
僕のが先に死んじゃうんだ
でも
その花が散ったら
君も一緒に来れるよ
むしりとっちゃ、だめ?
良いけど、効き目がなくなっちゃうよ
それでも良いならね
じゃあ、やめとく
ありがとう
被せた刹那
降り始める白い雪
黄色の花びらは少しずつ
白く染まっていく
ん、思ったより、早そうだね。
そう言った少年の顔は
初めて見るような安心の白に包まれていた。
『42℃のお題』より
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