ひとつだけ

大嫌いな弱い僕を
ずっと前に此処で置き去りにしたんだ

差し出された手は
僕の知っているそれよりも
ずっと皺だらけで弱々しくて

そのまま握り返す手も
僕の記憶のそれよりは
ずっと温度が低かった

吃驚して
それ以上に覚悟する
喪失への可能性

それでも
虚ろな瞳に宿るには
眼前の人の成功のみ

此の人は過去を
僕の生い立ちを
知っているから

もしかしたら
何となくでもわかるのかも

記憶力を失った脳でも
光を失った瞳でも

生きなきゃならない
なんて意志は
いつか重圧に化けて
降ってくるかもしれないのだけど

それが重くのし掛かるほどには
一生懸命になってもいいかって

いままでのぶんも ね

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