14 純白の花火

綺麗に 散っていくね

少年は一言呟くと
つい先程殺した女から手を離して
屈託なく笑った

怒りの最高潮まで挑発して
体内から皮膚の外まで、血管を繋いで
ほんの少しだけ 破る

そうすると
まるで風船のようにしぼんでいく
彼女らを見るのが
彼は愉しそうでたまらなかった

血が抜けた抜け殻に
ゆっくりと首を絞める、その時に
彼は絶頂を迎える

どす黒い赤を
汚れた血を嫌う彼は
ただひたすらに白を求めた殺害方法を
其の手に身に付けた

自分の血は汚れない
自分の手も汚れない
手の代わりはこのナイフだから

高笑いをすることはなく
まるで愛想笑いのような小さな笑みを
いつも浮かべて

どうして、彼はこうなったのか
いつから、女を殺し始めたのか
いつまで、女を殺し続けるのか

ある時に
彼はいつもの笑顔で呟く

誰かこのナイフを扱えるのならば
僕を殺してくれないかな
花火大会の日の、一番大きな花火と同時に

僕自身の生まれつきの穢れた血も
さらっと吐き出してくれないかな
なんて

こんなつまらない殺し
本当はいつ終わったっていいんだ
純白の花火だけ求めていたのだけど
どうも
僕が殺す女共は、そんな白は残されていないらしい

いつになく、哀しそうな顔で云う

真っ白な花火なんて
本当はどこにも無いのかもしれない

だから
誰かが僕の血を抜いて
新しい血を注ぐ気があるのなら
その時は、あの川の水を
管一杯に流し込んでくれたらいいな

少年は探し続けている
ナイフを渡せる
自分が殺せない
真っ白な血の持ち主を

花火が 綺麗だね
うん
それまでは、此で我慢しているよ

いつまでも白を持ち続ける
そのナイフをしまって
久し振りの長い眠りに就いた。

「42℃のお題」より
https//sos.eco.to/c/t/

刃の約束

かこ かこ
首を回して
笑う梟

眼は決して閉じないで
対象を見据えたまま
くるりと顔を一回転

羽根の内側には
誰にも渡さないと決めた
大切なものだけを
そっと包み込む

羽根の外側は
一枚一枚が刺さる
雨のような翼

鬱陶しさに飛び立つとき
何枚かをはらって
その邪魔に
ひらり さくり
突き刺さるように

にや にや
舌をちらつかせ
笑う蛇

鋭い眼は思考を言葉に
口の中では舌で刃を研ぎ続ける
長い体を小さく巻いた 蜷局

蜷局の内側にも
存在しないと思っていた大事なものを
未だに軽い夢見心地を抱きつつ
精一杯の優しさで包み込む

蜷局の外側は
固い硬い鱗の刃
手を入れられると勘違いした奴は
串刺しにされる

どちらも、同じなのだ と
互いが互いを見て言う

しなやかな羽根
強靱な鱗
それぞれがそれぞれを
互いに欲し合うように

僕らは表裏一体であって
同一でもある

鋭さは君にもあるだろう
ベクトルが違うだけだ
しなやかに刃を扱うのは
僕にはまだできない

そうかな?
これは刃なんかじゃないよ
まだまだおもちゃの剣だ

なら、その意識こそが
しなやかさの証なのだろうね

苦笑いを浮かべた、蛇

あぁ
君のその天秤は
頼もしくも羨ましいよ

like a owl
like a snake

いずれは
君にも羽根を
僕にも鱗を

交えつつ

砕けた
予定

あー、うん
まぁでも
目下の課題は
自然解決 かな

巧く廻っているなぁ


明日から 少し
忙しいのもあるし

何となく
ゆっくり
時間の流れを愉しむのも
必要なことなのでしょう

其方が
切り離したい なんて思いだしても
もう僕は生きていける
吸いたいだけ
吸わせていただいた

基盤は 完成した

スナイプ

かつて憎むしか
余裕のない相手も

少し知恵の回る
猿だと分かれば
何も怖くない

ん…

久しぶりに
少しばかり
シュミレート

うん
勝てる
全て僕の言葉だけで
話し掛ける相手を
話し掛けた後悔に
叩き込められる

自分で作り出す虚像の対象
それに負けなくなった時
僕はもう負けないんだ

あぁ、うん
君も いるしね
でももう
僕に無益な殺生は
したくないんだ

それに
君にも 似合わないし

心配しなくていいよ
どれだけ知恵が回ろうと

猿は人間に勝てない から

改めて 言えるよ
言うよ 高らかに

僕はもう
独りじゃない

ありがとう

二人其れを寝過ごそう

あぁ、待っていたんだよ
君が死の欲望を捨てる時を
蛇がまた、凛々しくなったね

読み返した日記は
今思えば
寂しさで溢れ返っていて
足らないはずのものを
知らずに苦しむ僕の姿

それも、わかったんだ
包み込む羽根の中で
狐の子が教えてくれた

不器用故の
局所的特化

でもね
何も悲しむことはなかった
ありきたりは、大嫌いだから
この状況を幸福に思うよ

それに
もう、寂しくなんかないんだ
此の寂しさを、知ってくれる
それだけでも、よかったのに

二倍も要らない
一つとして
分かち合えるから

そっと
重ねる

好い日々だね
駆け足だったから
ゆっくり休んでよ

おやすみ。

曖昧を重ねて

踊ろう

あの夜の夢は
気分の悪い物をぶつけて
すまなかったね

でも
漸く、整理がついた

捨てるべきであった
破滅嗜好の潜在欲求
忌むべきものでもあった

あの自殺を繰り返す夢は
それらが一気に捨てられたということ

あとは、うん
きっと此まで
死にたがっていたのは
僕だけではなかったから

あの子の夢まで
貰って食べてしまえたの
かも

もしそうならば
此ほど なものは、ない

受け取って
排出するという技術
これは彼がくれたもの

僕の思考力ならば
もっと、効率的にできると思ったから

黒は黒を吸い込み
黒は黒を与え
黒は黒になる

なりたいような
鮮やかでしなやかな黒

暫くは眠らせて貰う

また、何かあったら
もう、呼ばなくても
起きて会いに行くよ

鉄の香り

此は、あぁ、すまない
珍しく無意識の願望か

とにかく、礼を云いたい
何度も 何度でも
重ねても足りない

それに、僕はまだ
あの狐にきちんと挨拶をしていなかったね
できれば、居るうちに

無理をさせて
すまない

12 嗄れた喉

幾ら叫ぼうと跳ね返り
此の耳を、咽を痛めつけるだけ

四面楚歌に僕を取り囲む
憎ましい程に白一面の壁

唯一無二の黒は
部屋の中心にいる僕のみで

反響して拡大される
自らの声を受け止め押し込み
其の色を更に濃くしていく

この部屋に閉じ込められて
もう5年
壁に気付くも
壊してくれる人は現れず

それでも耐えきれず
幾度も叫び散らし
嗄れた喉
此を潤す水源はなく
砂を泥を投げつけようと
憎き壁は白いまま

染まれ
染まれ
染まれ

願いは願いのまま
虚しく宙を泳いで消える

いつに なったら
此の声は 壁を破れるのか

いつに なったら
此の声に 気付いてくれるのか

喉から繋がる彼の中に
ぽっかりと空いた穴は
全てを無に返すホワイトホールのように
黒かったはずの彼を白くしていった

「42℃のお題」より
https//sos.eco.to/c/t/

冷めた瞳と温もりを

「もう、いいだろう」

そっと静かに煙草の火を消して
彼はあの言葉を口にした

一生言うものかと
言えるものかと思っていた
その言葉は
煙のように宙を舞って
獅子の中にきっと潜り込んだ

やっと、見つけることができたのだ
彼も、そして僕も

此処が最終到着地点なんてことはなく
此処からやっと始まるのだ

はなむけの唄を贈る